INTEGRATED REPORT 2019

特集

特集: 次世代通信「5G」に向けたデバイス事業の取り組み

当社では中核事業であるデバイス事業により培ってきた通信技術資産を活かし、M2M分野への参入拡大を目標としています。2020年3月から日本国内で5Gの商用サービスがスタートし、「高速・大容量」「低遅延」「多数同時接続」を実現し、あらゆる産業にインパクトを与えるものとして期待されています。「あらゆるもの」が対象となるIoT時代となり、都市部・地方を問わずニーズによりサービスが柔軟に展開され、地域課題の解決や地方創生への活用が期待されています。当社は通信デバイスメーカーとして、LTE対応製品だけでなく、今後拡充が期待される5Gに対応した製品など、新たな分野に積極的に展開をしています。

5G

5G分野におけるネクスの取り組み

ネクスでは、BtoB向けの通信アダプタ・モジュール販売の分野の強みを活かしながら、建設機械など高画質映像を活用したリアルタイムでの遠隔操作や、各種機器の制御、ビッグデータ収集などで利用する5Gモジュール搭載製品やディープラーニングの画像認識技術を組み合わせたソリューションなどの企画を強化するとともに、アプリケーションサービスにも取り組んでいきます。

5G活用例

■ 画像認識技術

高速道路の交通量集計の見える化
高速道路の交通量集計の見える化
ミニトマトの「品種・大きさ」別集計結果を見える化
ミニトマトの「品種・大きさ」別集計結果を見える化

今後はAIやブロックチェーンの発展により、現在よりはるかに効率化・省力化された未来が予測されています。こうした未来を見据えて、当社は、グループ企業であるカイカやネクス・ソリューションズ、フィスコ仮想通貨取引所との連携を強化、様々な対象物に、機器間をつなぐ通信端末や仮想通貨の決済端末とアプリケーションを提供することで、企業が発行するあらゆるトークンを有機的に結び付け、トークン建ての決済を可能とするIoT決済プラットフォームの研究を行っています。

■ 農業ICT:新しい農業のビジネスモデルを創出

当社では中枢事業であるデバイス事業により培ってきた通信技術資産を生かし、M2M分野への参入拡大を目標としています。その具体的なモデルのひとつとして、新農法および農業設備、それぞれのテクノロジーを融合させた農業ICT事業により、ICTを農業の担い手とした新しい農業のビジネスモデル創出を目指しています。

当社が注力している農業ICT事業「NCXX FARM(ネクスファーム)」では、生産から販売まで生産者のサポートを行い、AIによる新たな育成モデルと最適化モデルの研究開発、実証試験を進めています。農業用ハウスの複数の環境制御ツール(換気扇、窓、遮光・保温カーテン、ミスト発生装置、灌水システムなど)と、デジタル管理された化学的土壌マネジメントによって農作物を栽培し、AIを使った画像認識技術で収穫時期の判断を行っています。また、農作物の「自動収穫ロボット」の研究開発にも着手しています。

ハウス環境を数値で把握するので、熟練者の勘や経験に頼ることなく、初心者でも農業を始めることが可能となり、障がい者雇用創出や新規就農への参入ハードルを下げることに貢献しています。また、環境へ与える負荷を最小限に抑え、「安心、安全、エコ」な作物を消費者に提供することが可能です。

2019年9月にワークスモバイルジャパン株式会社の仕事用LINE「LINE WORKS」と連携したことにより、温度や湿度、日照などの各種環境データのモニタリングや監視をパソコンやスマートフォンでできるようになりました。仕事の合間の休憩時間や外出先からもこれらの情報に簡単にアクセスできるようになり、新規就農をより容易にしています。悪天候などの非常時においては、「NCXX FARM」が異常を検知次第、「LINE WORKS」でアラートを送り、予測が難しい天候リスクなどの異常事態にも即座に状況を把握し対応することで、生産者の様々な作業負担軽減を実現しています。

LINE WORKSまた、栽培面でも生産者の作業負担軽減を目指しており、多段式ポット農法と呼ばれる特許農法を採用しています。これは、作物の育成段階に応じて適正な環境を整え、おいしく健康な作物を栽培できるように設計されたポット式栽培で、ポット内に窒素やリン酸、カリおよび各種ミネラルをバランス良く配合した独自の機能性用土を用いて、作物の自然な生命力を最大限に引き出すことができます。ポットによる栽培なので、畑を必要とせず、肥料設計された土をポットに入れ、苗を植えるだけで栽培が可能です。置き場所を選ばず(冬場はビニールハウスでの栽培をおすすめします)、耕運機などの農機具は一切不要で、面倒な除草や土耕作業を軽減することができます。単位面積当たりの定植量/収穫量を増やし、作付けごとに新しい用土を使用するため、連作障害の心配もありません。

また、当社の本社がある岩手県花巻市の遊休地に試験圃場を建築し、12塔のビニールハウスで多段式ポット農法を使った各種実証試験を実施しています。ここで栽培された高い糖度が特徴の「黄いろのトマト」は、花巻市の「ふるさと納税」の特産品に採用されるなど、高い評価を得ています。

また、農業事業に携わる企業だけでなく、農業事業と関わりがなかったが興味を持った企業により多く農業ICTを導入してもらうため、試験圃場で毎週金曜日に有料施設見学会を開催しています。この見学会では農業ICTシステムの概要説明、解説資料配布やガイド付き見学、試食販売会を行っています。

このように、作業の省力化と効率化を実現し、また地産地消を実現できる魅力ある農業ビジネスモデルを創出しました。今後はこのビジネスモデルのより積極的なアピールを行うとともに、フランチャイズ加盟店の増加を目指していきます。